繊維機械の説明

「繊維機械について」〜紡ぐ・織る・編む〜


■■■■■4.織機について

 ユニクロやGAPなどの大手SAP(製造小売業)をはじめ、フランス、イタリアなど世界の一流ブランドの高級衣料用の
生地等を作るのが織機です。


■■■ G型自動織機

 豊田佐吉が大正13年(1924年)に発明したG型自動織機(写真1)は、高速運転中に少しもスピードを落とすことなく円滑に
杼(ひ)を交換して緯(よこ)糸を補給する画期的な自働杼換装置をはじめ24の自働化、保護・安全装置を装着し、生産性は
大幅に向上しました。
 G型自動織機は、総合的性能と経済性で世界一と評価され、各国の繊維産業の発展に大きく寄与しました。そして、昭和4年
(1929年)には世界のトップメーカーであるイギリス・プラット社に技術供与(特許権の譲渡)し、日本の技術者に自信を与えました。

 
 (写真1 G型自動織機)



■■■ 図解、布の種類・・「織物、編物、不織布」

 布には織物と編物、そして不織布があります。(図1)
「織物」は経(たて)糸と緯糸を交差させて布にしますが、「編物」は糸をくねらせ絡めて布の状態にします。
「不織布」は糸になる前の素材(綿や羊毛などの繊維)を絡み合わせて、熱や機械、または科学的な方法で接着し布状に
したものです。従って、布を織るには、経糸と緯糸が必要です。

     
 織物  編物  不織布
   (図1)  



■■■ 緯入れ方式

上下に分かれた、経糸の間に、緯糸を通す道具をシャットルと呼びます。(写真2)

 
 (写真2 シャットル)

 シャットルの中には緯糸が巻かれた木管が入っており、シャットルの横には、緯糸が引き出される穴があります。シャットルから
最初に引き出される糸端は固定し、@経糸の間を反対側へ通します。これで経糸の間に緯糸が一本通ります。
緯入れが終わるとA緯糸を布側に押し付ける筬(おさ)打ちを行います。B経糸の上下を入れ替え、先ほどと同じようにシャットルを
通して緯入れを行い、これを繰り返すと布ができます。


■■■ 織機の機構

 織機は、送り出し・開口・緯入れ・筬打ち・巻き取りの5つの要素から構成され、数千本の経糸を巻いたビームから引き出された
経糸は開口装置によって上下のシートに分割されます。
ここに出来た隙間に、シャットルやレピアで、緯糸を挿入し、緯入れが完了すると筬で緯糸を打ち込んで織物となります。


■■■ ジェットルーム・・・“WJL”と“AJL”

流体の噴射を利用した緯糸を飛ばす織機をジェットルームといいます。
高圧力水を使用するジェットルームをウォータジェットルーム(WJL)
圧縮空気を使うジェットルームをエアージェットルーム(AJL)
といいます

@ ウォータジェットルーム(WJL)
 WJLは、緯糸を水の噴射力を使って挿入していく織機です。(図2)
ポンプで圧縮した水をノズルから緯糸と共に噴射すると、噴射された水は水滴となり緯糸を伴って、数センチの経糸の隙間を飛んで
いきます。(写真3)

   
 (図2 WJLの仕組み)  (写真3 WJLの噴射の様子)

 織物の規格によって織機の幅は異なりますが、水に導かれた緯糸は、1.9mから4mもの長さを水平に進みます。 一分間に1000回
以上の噴射を行う機構は、さながら機関銃のような水鉄砲を想像してください。 ノズルから噴射した緯糸が進むスピードは、新幹線並
みになる場合もあり、水滴はやがて拡散し霧状になりますが、可能な限り水を収束させた状態で、つまり遠くまで水滴の状態で噴射する
技術が最大のノウハウです。 総重量2t近くもあるウォータジェットルーム(写真4)の中の、数百グラムのノズルに、この機械の最大の
ノウハウの一つが込められています。

 
 (写真4 WJL)

 水を使うので、さび対策のための塗装にもノウハウがあります。 織機は定期メンテナンスや織物の種類を変更するとき以外の時間は、
24時間360日フル稼動で、しかも、ずっと同じパフォーマンス・性能で稼動することが求められる機械です。
しかも、1分間に1000回転(1000本の緯糸を挿入する)のスピードで稼動し続けるというと、織機の品質の厳しさがわかると思います。

 用途は、ナイロン、ポリエステルなどの水を吸い込まない(疎水性)の合繊糸・フィラメント糸の織物を製織します。代表的な織物例は裏地、
カーテン、エアバッグ、ウインドブレーカ、傘地、土嚢等。 糸の前処理技術(サイジング=糊付け工程)などの技術進歩と共に、髪の毛よりも
細い極細糸の製織も可能になりました。近年大流行している超軽量のダウンジャケットやウインドブレーカの生地は、WJLで極細糸を織った
生地です。

WJLの市場は、日本、中国、台湾など。かつては欧州もありましたが、地理的市場が変遷し、アジア地域に集中しています。
今後は、@新興国市場で注目されている省エネ、環境保護のニーズに応え、A高速・高品質の稼動を支える電子制御の向上により、使い
やすい機械の開発を進めていく必要があると考えられます。


A エアージェットルーム(AJL)
 約80cm間隔で設置されたエアージェットノズル(図3)が噴出される圧縮空気の力で、緯糸を飛ばす機構です。
高まる省エネニーズに応えるために、緯入装置を刷新し(写真5)、エア圧、空気消費量の大幅な低減を実現しました。

   
 (図3 AJLのノズル)  (写真5 AJL )

 このエアージェット織機では、インテリア用のフィラメント素材、細番手高密度のシーツ、デニム、ウールやタオルだけでなく、プリント基板用の
ガラス繊維といった産業資材まで幅広い分野で製織することができます。 最新のエアージェット織機では、省エネ・汎用性を追求し、高品質な
織物を低コストで生産することが可能となり、新機構の電子開口では伸縮性の高い糸や様々な糸を難易度の高い難しい織物を高速で織り上げ
ることができます。 また、大型ファンクションパネルを採用して、職人の製織技術を盛り込んだ製織支援システムや稼働状況をモニターするなど
の工場管理にもお役立て頂いております。



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