繊維機械の説明

「繊維機械について」〜紡ぐ・織る・編む〜


■■■■■3.化 学 繊 維 機 械

■■■化学繊維機械の世界のメーカー

 合成繊維製造設備の業界では、この10年、日本のTMTマシナリー社とドイツのバーマーグ(BARMAG)社との2強時代が
続いており、僅差でシェアを競り合っています。
 TMTマシナリー社は、国内の合成繊維製造装置メーカー大手3社であった東レ・エンジニアリング、村田機械、帝人製機
(現ナブテスコ)の合繊機械部門が、平成14年(2002年)に統合して起ち上げられた合成繊維製造機械のトータルメーカーです。


■■■ 紡糸設備(図1)

 合成繊維は、主として製造工程中に延伸や熱処理を行うことで生地への最終工程である織りや編みに直接に使われる生糸
「FDY(Fully Draw Yarn)」と、仮撚などの新たな追加工を要する半延伸糸「POY(Partially Oriented Yarn)」とに分けられます。

 「FDY」は衣料用途では保温性や速乾性など、タイヤコードやシートベルト等の産業資材用途では特別に高い強度に対応する
など一般的に高付加価値の糸が多い。TMTマシナリーはこの「FDY」の製造設備に強く、世界で高いシェアを持っています。

 一方、「POY」は一旦巻き取られて生産された後、様々な用途に合わせて追加工されますが、対応する最終製品のすそ野は
FDYよりも多岐にわたっています。

 世界的な人口増や所得増で糸消費が拡大する中、合成繊維は限りある天然繊維を補完する形で成長を続けており、合繊製造
設備機械の需要も高い水準を維持しています。リーマンショック後の回復も早く、ここ数年は右肩上がりの売り上げを続けてきて
いますが、直近では中国景気の減速から鈍化傾向にあります。
 
 (図1 紡糸設備)


■■■ ワインダー(巻取り機)

 合成繊維の製造能力は、糸を巻き取る機械である「ワインダー」の能力に左右されています。 近年、衣料の製造現場は、中国に
集中していて、競争は激しく、生産量を上げてコストを更に低減するために糸の製造能力向上を図る企業が多く、より高速で効率的に
糸を巻き取れる高性能なワインダーに次々と設備投資しています。
最近では、1台のワインダーに、巻き取り芯(ボビン)を4本備える高性能機が売れ筋となっています。

 糸は、時速330q程度の速度で連続的に巻き取られます。標準規格品である75デニールの糸は10kg巻が多いですが、この10kgの
パッケージは長さ120万メートルの一本の合繊糸を巻き取ったものです。 勿論、巻き取り中は、糸切れはおろか、フィラメント切れも
許されず、連続的に巻き取るためには、糸の張力やパッケージ形状を精緻に制御することが求められ、回転体の高精度制御技術や
振動抑制技術が必要です。

 このような微妙な制御を、実際に製品として成立させるには、機械そのものの精度も高くまとめるために機械部品の加工精度も非常に
厳しいものが多く、具体的には、1本のアームにボビンを何個設定するかで長さが変わります。長いものでは2m近くなります。(写真9)
   
 (写真9 ワインダー )

 パッケージの交換を素早く行うためには、ボビンを片持ちに設計することが基本ですが、平均巻量10kgのパッケージを12個程度載せた
長い円筒状のボビンを超高速で回転させるわけですから、振動の問題は不可避です。 振動が起こると糸品質を著しく低下させるため
回転体の部品精度が必要で、その精度は、フレ、真円度、同軸度などμm単位で仕上げなければなりません。

@ 超高速回転が可能なスピンドルの精密加工精度
 15000〜20000rpmで振動無く回転させることが出来る長尺小径スピンドルを実現しており、高い精密加工技術です。1800mmの長さの
スピンドルをミクロンオーダーの振れ精度に抑える製造技術を誇っています。

A 巻取速度精度
 ワインダーは長年培った制御技術により速度を0.1%以内に抑えることが可能となっています。

B トラバース綾目形成精度
 良好なパッケージ形状および優れた解舒性を実現するにはトラバース装置も極めて高い制御精度が必要となります。
この高精度の制御が、良好なパッケージ形状と解舒性を実現しています。


■■■ 化学繊維の世界市場

 中国の化学繊維の生産設備は、近年では世界の約四分の三を占めるに至っており、圧倒的な規模を有しています。(表1)
 
(表1 化学繊維の世界市場 (単位:千トン/年) 出所:繊維ハンドブック)


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